米国の「平和」と「回復」を思う
2009-10-16


イラク戦争がはかばかしくないことが明らかになった頃だったろうか、ブッシュ政権下で国務次官、米国国連大使にもなったジョン・ボルトンがイギリスで開かれた講演会に出席し、聴衆から「対テロ戦争で世界は平和になったと思うか?」と質問され、「Yes」と答えた。その後聴衆の一人(女性)が「考えている世界が違うのよ。」と話していた。

この女性の見方は正しいと思う。「World」とか「世界」とか言っても、その定義は結構広く、人によって範囲が違う。

このように個々人によって定義は違うことを前提に、現在の米国経済を見てみるとなかなかブラックユーモアになる。例えばFRBは9月24日に次のように発表している。

FRB、米経済は「上向きつつある」 ゼロ金利は据え置き
[URL]

また遡ってこの7月、FRB議長のバーナンキさんは次のように言っている。

米FRB議長、雇用なき回復の可能性を示唆─有力議員=CNBC
[URL]

実際、財務省関係に多数の元社員が入っているゴールドマン・サックスは好調だ。GSだから、もちろん実体経済の支援ではなく、「債券や為替、商品などの取引収入」による利益だ。

米ゴールドマン・サックス:純益、前年同期比3.8倍 業績、着実に回復−−7〜9月
[URL]

これは、バーナンキさんの「雇用なき回復」が正しかったことを意味している。多くの銀行は破産処理になっているが、ほんの一部の金融機関は「回復」したのだ。

ボルトンの言う「対テロ戦争で世界は平和になった」のと同じ。ボルトンはいわゆる「世界」に対して別に責任を負っているわけじゃないし、FRBは米国経済全般に責任を負っているわけじゃない。だから、彼らの言うことは正しいのだ。

失業率増えっぱなしで、オバマさんが次の記事にあるように「米経済は景気回復軌道にある」と言うのはどうかと思うが、

米経済は景気回復軌道にある オバマ大統領
[URL]

とはいえオバマさんの「米経済」とやらが何を意味しているのかも怪しいので、とりあえず、オバマさんの回りのブレーンが関係する業界が回復すると、「米経済」は回復したことになると考えた方がいいかもしれない。つまり、俺ら日本人が一般に考える概念を当てはめるのは間違っており、米国政治社会は特定の利権集団の状況次第でどうにでも見解が変わると考えるのが論理的なのだ。そもそも、「社外取締役制に見るお手盛り」で書いたように米国政府や議会がそうなっているのだから。

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